動物行動学者の日高敏隆さんが亡くなられた。訃報を聞いた瞬間に、ああ、一度お目にかかりたかった…と思った。それなのに一度も本気でお話を聞きに行こうとしなかった。日高さんの名前を知ったのは高校生の時で、新聞で滋賀県立大学の初代学長に就任されるのを知った。どこの大学を受けようか考えてたので、動物行動学者が学長の大学ができると聞いて、ワクワクして「滋賀県立大学いいなぁ」と思ったのだった。結局、新設の大学で不安だったこともあって受験はしなかったのだけど、今でも時々、滋賀県立大学に進学していたらどうなっていただろうと思うことがある。でも、日高学長に簡単に会えるわけでもないだろうし、学長が誰であっても大学なんてそんなに変わらないのだと思ったりもしたのだけど、どうやらそうでもなかったみたい(幾霜さんの素敵な
エピソード)。滋賀県立大学に行っていたら、もう少し動物行動学に明るくはなっただろうけど、やっぱり動物行動学者になろうとは思わなかったと思う。たとえ卒論を動物行動学で書いても、結局、大学院は森林生態学できるところに行ったと思う。それでも、日高さんが学長の大学ってやっぱりワクワクするな。
そんな憧れを抱いているくせに、日高さんの著書は一冊も読んだことがない…と気がついて愕然としたのだが、実は高校時代に読んだ
ソロモンの指輪は日高さん翻訳だった。なにも知らずに読んでいたけど、かろうじて一冊は読んでいたかとホッとした。ローレンツがすごいのか、日高さんがすごいのか分からないけど、イマイチ動物を好きなれない私でさえ面白いと思った本でした。地球上に一緒に棲む動物がなにを考えているかを知るというのは単純な喜びであり、そこから人間を、自分を知ることになるんだと思います。人間の世界だけ見つめていてもなかなか解決しないことも、動物や植物も同じルールで動いていると知ると、そうか、お前もそうだったのかと目を開かされます。そんなルールから自由になるも不自由に縛られるも自分次第だよね。私にとっての生態学の効用はそんなところでしょうか。日高さんの著書はどれも楽しそうで(
なぜ飼い犬に手をかまれるのか、
人間はどこまで動物か)、私も植物の生きざまを一つでも二つでも楽しく伝えられるようになりたいと思う。訃報も励ましに変える日高先生、すごいですね。ご冥福お祈りします。